4、初の試作マウスピース、その名はX001!

前回はマウスピースの製作手順について述べましたが、あれはすでに何個か製作した後、 最も効率がよいと思われる方法をまとめたものです。 マウスピース製作法を確立するまでの試行錯誤。 今回は試作マウスピースの時の製作法をまとめます。



図x001-1
マウスピースの素材は同じで、φ53、長さ150mmの丸棒です。



図x001-2
前回説明した方法とはもう全然削る場所が違い、材料の真中を削っています。
この理由は、突切りバイトという、材料に溝を入れて切り落とす工具がなかったためです。



図x001-3
そのまま強引にマウスピースの形へ荒削りします。



図x001-4
ここまでくると後は前回の製作法の図7からと同じ工程です。


実は試作1号は製作に3日を要しました
この時に感じたのは、
工具は十分揃えなければならない
無駄な作業工程は仕上がりを悪くする
事です。
(しっかり準備を整えないと失敗する、これは何事にも共通する事ですね…)
工具を十分に揃えず、他の工具で代用しようとすると、製作には非常に時間がかかります。
このため試作2号を製作する前には、製作には欠かせない突切りバイトを揃えました。

「無駄な作業工程は仕上がりを悪くする」というのは、普通の方には分かりにくい事かもしれません。
あらかじめ作業手順をしっかり考えておかないと、無駄に時間を費やし、無駄に精度を悪くします。 例えば、材料を削って切り取った後、再びチャックで材料をつかみます。 その時に円のセンターがずれるため、掴みなおした後は真円に削れません。
最も影響するのはシャンクの部分。
真円に削れないと、バックボアとずれてしまい、吹奏感に大きく影響を及ぼします。


さて、実際に完成したX001、メッキはしていないものの、楽器に取り付けて試奏する事は可能です。 早速私がいつも使用しているbmで試奏してみました。

音は出ました!
いつも何気なく吹いている音を、自分の作ったマッピで吹くのは不思議な感じです。

音階、リップスラー、タンギング、音域など、様々な項目をチェック。 そしてコピー元のヘルバーグ2とも吹き比べました。
その時は、恥ずかしながら興奮していたためか、 「ホンモノと一緒じゃないのか?もしかして名器が…!?」と思ってましたが、 時間を空けて冷静に判断すると、やはり色々な部分で違いがありました。

まず、バックボアが元より大きくなってしまったため、息が大量に必要、そして音が当たりにくい。 言い換えれば音が割れないという事になるかもしれません。
そして旋盤の技術が未熟なため、カップは滑らかな曲線でなく、ガタガタ。このためかリップスラーも若干上手く吹けない。

しかし、リムの再現はかなり上手くできました。 今後はカップ内部の精度向上が目標になりそうです。

後日、メッキ処理をしていない地金の真鍮マッピを吹いたため、唇がかなり荒れてしまいました…。


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