ついに組み立て作業、楽器修理の最も重要な工程を迎えました。
まずは組み立てに必要な技術ハンダ付けの大まかな手順を書きます。
工程1のハンダ付けする周辺を、キサゲという彫刻刀のような工具で削ります。 削って地金を出すことで、真鍮とハンダと馴染みやすくするのです。 工程2では「フラックスを塗る」とありますが、フラックスは一種の希塩酸です。 工程1で地金を出した部分が酸化され、ハンダが付き易くなるのです。 工程3の加熱ですが、この加減が非常に難しい! ラッカーが塗ってある楽器では、加熱しすぎれば焼けて茶色く焦げてしまうのです。 しかしラッカーを塗っていなければ、磨いてしまえば問題ありません。 これは今回ノンラッカーにした理由の一つでもあります。 工程4での「ハンダが外周部に沿って行き渡る」という表現、 実際に見ないと伝わりにくいかもしれません。 これはフラックスの効果で真鍮とハンダが結合しやすくなるためです。 フラックスを塗った部分をハンダが流れていくのです。 つまりフラックスを周辺に塗りすぎると、余計な部分にもハンダが付いてしまい、汚くなってしまいます。 実際狙った部分をハンダ付けするのは大変で、楽器には無数のハンダ跡が残ってしまいました。
もう一度ハンダ付けの工程を詳しく書きます。
・キサゲでハンダ付けする個所を削る。 どれか一つでも工程をおろそかにするとハンダは綺麗に付きません。 特にキサゲとフラックスの工程を忘れるとハンダは真鍮の上ではじかれ、 思わぬところに付着してしまうのです。 (ハンダの流れる様子を一番上手く表現するならば、映画「ターミネーター2」の液体金属の敵ロボットかもしれません) フラックスの塗布する場所でハンダ付けされる場所が決まる、と言っても過言ではありません。 また加熱の程度も問題で、ハンダが付かないからといって長時間加熱するとハンダ付けする周辺が熱くなり過ぎ、 ハンダがなかなか固まりません。 手を離してしまってパーツが動き、位置がずれてしまって最初からやり直し、を何度もやってしまいました。 さらに支柱が密集している部分などを加熱しすぎると、以前にハンダ付けした部分も溶けてしまい、 全部外れてしまうというさらに悲惨な事態も起こりました。
前述の方法で、苦労しながらもハンダ付けを行いました。 何度も失敗しましたが、慣れてくるとペースもあがり、一気に組み立てることができました。 ハンダ付け後はところどころ赤色になっていますが、これは加熱によって銅が析出したためです。 亜鉛が蒸発する、という話も聞きましたが、どちらにしても熱反応で銅の比率が高くなっているようです。 これはコンパウンドで磨けば簡単に取れます。
マウスパイプの取り付けです。 ヘコ出しのためにまっすぐにしていましたが、組み立ててからでないと元の曲線が分からないため、 この段階で曲げなおし、取り付けとなりました。 この際気に入らなかった曲線を微妙に変えてみました。 右の写真は元の曲線ですが、ベルから管にかけてがわずかに直線になっているのが分かるでしょうか? 私はこの部分が吹奏感に抵抗を与えているのではないか?と思い、 この機会に一定の曲線を描くよう曲げなおしました。 それが左側の写真で、元の曲線に比べてかなりゆるやかになっています。 |
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・ニッカン縦バス改造記その2
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